ちょっと趣を変えて、自分のMix作業の普段の作業について
書いてみたいと思います。このやり方が必ずしも正解ではないと
思っていますが、Mix初心者さんの参考になればと思います。
Mixって、 カラオケと歌ったものを足し算するだけじゃないの?と
思う人もいると思いますが、それはある程度正解である程度間違い。
混ぜるだけならそれでいいんですが、そのMixの結果はまず100%
世の中で販売されているような奇麗なものにはなりません。
いろんな段階、プロセスを経て磨き上げる作業が必要なんです。
i )まずは下処理から。
たいていはボーカルやコーラスの録音物とカラオケ音源をセットでもらいます。
ここで行う下処理とは主に録音物に対して行います。
録音物のノイズが多い場合、環境や機材の関係で奇麗に録れていない場合は
その癖をある程度消してあげる必要があります。
そう、料理でもやる下処理と同義です。
血抜きをして臭みを消す、食べにくいスジを取ってしまう、
塩揉みをして苦さをなくす、みたいな処理を料理ではすると思いますが、
録音状態が良くないとそういった作業にとても時間を掛けます。
具体的にはEQ(イコライザー)で不要な周波数をばっさりカットしたり、
ノイズを軽減系のプラグインを使うのですが、この作業は正直楽しくないです。
どうしても消しきれない癖ってあります。それに、この手の処理はすればするほど
原音から離れてしまうので、 「あ、加工したな」とすぐに分かっちゃいます。
これを気づかれないレベルギリギリまで追い込むのも技術ではあるんですが。
一例ですが、僕が使うDAWのAbleton Liveのイコライザーです。
この画像の場合、ローの周波数を削ってます。
ii )音のツブを整える。
下処理が終わって、Mix本題に入っても大丈夫な素材が出来たら、いよいよ
本作業に入るのですが、次いでやるのが”音のツブを整えること”です。
曲の中で静かなところ、にぎやかなところがある曲ならやはり歌い方や
声のボリュームも大小が生まれます。これをそのまま気にせずに、例えば
音の大きなところ基準でMixすると小さいところは聞こえなくなるし、
小さいところ基準でMixすると今度は大きなところがうるさくなる。
これを調整するのがここでの工程です。
上みたいに料理で例えると、材料を切るところでしょうか。
大きいサイズと小さいサイズが混在すると食感が悪いし、火の通りもまちまち。
そうならないようにある程度均質化してあげる必要があります。
ここで使うのはコンプレッサーやリミッター。特に僕はコンプで追い込みます。
コンプレッサーとは「圧縮機」なんですが、簡単に言うと
「小さな音は引き上げて、大きな音は締める」という効果を担います。
同じくAbleton Liveのコンプレッサーです。
コンプの使い方は知識と経験が重要。
試行錯誤をしたり、プリセットのパラメーターを
みて研究するといいと思います。
これで素材が整ったらいよいよMixの本題に入っていく感じです。
iii )タイミング&ピッチ合わせ。
DAWにオケと調整した素材を並べていよいよMix作業に入るのですが、
ここで歌とオケのずれを修正の作業を行います。
何をするかというと、音を聞き、波形を見て、突っ込んだりモタったり
している音を手動で切り刻んで調整します。
ところどころ波形がブツ切りになっているのは
タイミング調整を行ったところです。
この作業は結構歌い手さんの癖との兼ね合いもあって悩みどころの作業。
独自のテンポを持っている方もいらっしゃいますし、原曲の譜割をあえて
崩しているケースもあるので、一存で決められない要素です。
なのでここはコミュニケーションが結構大事。また、この段階で
必要があればピッチの修正も行います。
これはApple Logic X PROのピッチ修正機能、
Flex Pitchの画面です。この他にMelodyneや
Autotuneを使うこともあります。
このピッチとタイミングの修正もやり過ぎは聞けばすぐに分かるものになって
しまうので、下処理同様、いかに自然に直すかというテクニックも必要です。
長くなってきたので一旦締めたいと思いますが、
ここまできて、まだMixらしいことはやってないことにお気づきでしょうか?
トラックごとのボリュームバランスを取ったり、リバーブとかディレイとかの
エフェクトを掛けたりするのはこの後の作業です。
ミックスに入る前の段階の作業が実はすごく大事で、しかもここで手を抜くと
最終の成果にも影響を及ぼします。
所々で料理のたとえ話をしましたが、下拵えがちゃんと出来てないせいで
不味い料理ってよろしくないですよね。
生臭い魚料理、スジっぽい肉料理、ベチャベチャなライス。
そうならない為にしっかり頑張る必要があるんです。
でもこの作業ってあんまりクリエイティブではないです。
痛んだ材料をどうにかしておいしく食べられるようにするよりは、
新鮮でそのまま食べられる素材に腕を振るってもっと美味しく食べられるように
料理したい、と言えば分かってもらえるでしょうか。
(歌の技術のことを言っている訳ではないですよ、念のため。)
なので、提供してもらう録音した素材はノイズや癖の少ないものが
欲しい訳なんです。オーディオインターフェースやしっかりしたマイクを使ったり、
録音環境、手法にこだわって欲しいのはそれが理由ですね。
あ、機材や環境が整わなくても、「とにかく表現したくて仕方ない」という
衝動も分かるので、万全の素材ではなくてもMixの依頼はお受けしますよ。
まずはご相談ください。